犬と狼の違い・社会的序列(ヒエラルキー)

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犬と狼の違い

①狼と比べて、犬の脳は小さく、狼の約80%。

②狼に比して遥かに、犬種ごとの体型・体重に大きな差がある。

③狼よりも、被毛の種類・色彩が豊富。

④狼の方が表現行動が豊か。犬の表現行動は狼の64%という報告があります。

⑤狼に比べて、群れの社会的序列がルーズ。
例えば、森林犬(山や森で暮らす放浪犬)はハッキリとした群れを作ることが知られていますが、他方、農村や都市における放浪犬は一見して群れを形成しているようにみえない場合が多い。但し、彼らは一定の社会的集団に属していることが観察されています。
つまり、群れの形成・社会的序列がルーズ。

⑥狼は一連の狩猟行動をとる。つまり、獲物を見つける・忍び寄る・走って追いかける・捕まえて・咬みつき・食べる。けれども、犬はそうした一連の行動の1部を選んで、遊び(作業犬の場合は仕事)にしてしまう。

⑦繁殖行動においても、狼は群れの雌雄のアルファ個体のみが参加して年に1回おこなわれるのに対して、犬は可能であれば誰でも繁殖に参加できるし、雌の繁殖期は平均年に2回ある。

⑧犬はしつけや訓練ができるが、狼は基本的にはできない。狼に服従訓練を充分にいれたとしても、いきなり咬みついてきたりするようです。

⑨犬は吠えるが、狼は吠えない。遠吠えはしますが、ワンワン吠えません。

他にも色々ありましょうが、ひとまず、こんなところにしておきましょうか。また思いついたら、追加します。 

犬と狼の共通性

次に共通性。
①群れたがる。
狼よりもルーズであるとは言え、犬は社会的動物であり、社会的集団を作り、社会的関係を作ります。
同じく社会的絆を強く結ぶ動物である人との共通点であり、これほどまでに人間社会に溶け込んだ理由でもありましょう。

②社会的序列(ヒエラルキー )を形成する。
狼よりもルーズであるとは言え、やはり社会的序列を形成します。

社会的序列は、ヒエラルキーとかヒエラルヒーとも言われますが、ヒエラルキーというのは元々聖職者のピラミッド型序列を表す言葉だそうです。
だとすれば、犬の社会を表すのには適切ではないと考えて、私の場合は、基本的には「社会的序列」という言葉をメインに使うことにしております。
というのも、犬社会の序列は必ずしもピラミッド型ではありません。また、階級制とか位階制や身分制や上下関係というのも、人間社会を表す社会学的用語ですから、無用の混乱をもたらさないようにしたいのですね。

私が「人が犬より上位に立ちましょう」と言う場合、人が犬より身分が上だとか、エライとか、そういう問題じゃないんです。犬は社会的序列を形成する動物だから、その動物に即した対応の仕方をしましょう、ということです。 

同様の理由で、私は「リーダー」や「ボス」という表現よりも「アルファ個体」という表現を好みます。が、別のところでも書いていますように、意味合いさえハッキリさせておけば、用語はどうでもいい、とも言えるのですが。
「では、何故用語にこだわるのか?」と問われれば「意味合いをハッキリさせておきたいから」と答えることになるでしょう。 

犬は狼のネオテニー

さて、私は犬と狼の違いと共通性から類推して、犬は狼のネオテニー型だと考えるのが、一番しっくりくるのではないかと思っています。
ネオテニーというのは、幼形成熟のことですね。大人になっているのに、子供の要素を残しているということです。

但し、これは「犬の進化説としてのネオテニー仮説」とは、意味合いがちがいます。 犬の進化説として「ネオテニー仮説」をとるということは、犬はまず狼から、狼のネオテニーとして分化した(つまり、別の動物になった)ということになるからです。
言い換えると「犬の直接の祖先は犬である」ということですね。
実は、そういう説もあるのです。次の項で紹介しましょう。 

狼は犬の祖先か? 犬の祖先は犬?

一般に犬の祖先は狼だとされています。それ自身に間違いはないと思いますが、狼を飼い馴らすことによって現在の犬になったという説には異説があります。
つまり、犬の祖先は犬であり、犬は狼を飼い馴らしたものではないという説です。 
どういうことでしょうか?

生物学者のロバート・ウェインのグループが、犬・狼・コヨーテから集めたミトコンドリアDNAを解析して得られた結果によると、犬と狼はおよそ13万5000年前に遺伝的に分かれたことになると言うのです。

これは、これまで言われてきた「1万2000年くらい前に、飼い馴らされた狼が犬になった」という説に対する真っ向からの反論ですね。
面白いことになってきました。

ただ、ミトコンドリアDNAを使った別の解析では、犬と狼・コヨーテは別個の種ではない(人種間の差よりも小さい)という報告もあり、そっちでは狼と犬の違いよりも、犬種同士の違いの方が大きいという結論が出ています。

ミトコンドリアDNAのどの部分を解析に用いるかによって結果が違ってきているのか。あるいは、この両報告が、同時に成立するとする推論は可能なのか、そのへんが私には今のところよくわからない。

まだまだ、これからの分析・報告が待たれる分野だと思われます。
 

続・犬の祖先は犬?

さて、前項を書いた後に新しい事実がわかりました。

まず、犬と狼は10万年以上前に分化したという説に対しては、主に考古学の方から異論が相次いだようです。「化石的証拠がないではないか」というわけです。

その後、分子生物学方面からの反論も出てきました。
というのも、犬が狼から分化したのは13万5000年前という結果を出したのと同じ方法をブタとウマのミトコンドリアDNAに当てはめてみると。
ブタは6万年前から50万年前にブタになったことになり、ウマは30万年前ということになるのだそうです。
従来ブタは9000年前に家畜化され、ウマは6000年前と言われていたのとは、えらい開きがある。
ブタもウマも家畜化されることで今日のブタやウマになったというのが従来からの考え方ですから、これはおかしい。30万年前なんて現生人類はまだ地球上に登場していません。

つまり、ミトコンドリアDNAの変異は家畜化されることで加速化されるというのが、真相のようです。

となると、犬のミトコンドリアDNAの変異も、10万年以上かけてなされたものではなく、家畜化された後に大きな変化を遂げたと考える方が、確かに合理的だといえる。
というわけで、現在、犬が狼から分化したのは、結局2万年から12000年前というところに落ち着いているようです。
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