続・続・犬と狼の違い

ホーム> 補講> 続・続・犬と狼の違い

ついに見つけた! 「犬≠狼」論の根拠文献!

とうとう見つけましたよ!
「犬は狼ではない」論の根拠となったであろう文献を!

『犬はあなたをこうみている 最新の動物行動学でわかる犬の心理』。ジョン・ブラッドショー著 河出文庫。

ちらっと見ただけでも「犬には群れを作る習性がなく」とか書いてある。
そもそも狼ですら「群れの本質は支配ではなく協力だ」とも書かれている。

ワクワクすると同時に、恐る恐る読み進んでみました。
「恐る恐る」というのは、「犬には群れを作る習性もなく、社会的序列も存在しない」ということが科学的に証明されているのであれば、私はこれまでの「お散歩道」の理論と実践をすべて改めなくてはならないからです。

で、分かったことは・・・。

犬は群れないか?

30ページには確かに「犬には群れを作る習性がなく(時には集団を作ることもあるが)」と書かれてある。

その論拠となるのは、パリア犬の研究である。
「その一部はオオカミの社会構造も反映している」が、「エサをあさるときは単独で行動する。その点では、これらの集団をオオカミと同じ意味の『群れ』と呼ぶのは語弊がある」と述べている。
つまり「オオカミと同じ意味での群れ」は作らないということだ。そういう意見なら、私も賛成である。
続けて「ただし集団としてのテリトリーをもち、近隣の集団のメンバーから守っている。ここまではオオカミとよく似ている」と続ける。

ここでパリア犬の「群れ」を、あえて「集団」とするのは「オオカミと同じ意味での群れ」ととらえられないようにという学者らしい慎重さからであろう。

犬に社会序列はないのか?

さらに犬と狼の生殖活動の違いを述べたのちに「支配の上下関係は明らかでも、食べ物とすみかの優先権を決めるだけで、誰が子を作れるかを左右することはない」と書く。
何だ、やはり社会的序列があるではないか。

「オオカミとまったく同じ社会的序列は作らない」し、狼だってすべてのメンバーが虎視眈々とアルファ個体の地位を狙っているわけではない、ということが言いたいのである、ジョン・ブラッドショーは。
であれば、私にもまったく異論はない。

ブラッドショー自身による記述

ちなみに、ブラッドショーは『犬 その進化 行動 人との関係』ジェームズ・サーベル編の中で、「こうした方法で認められる階級制が左右されないことから、その群れのなかでは個々の動物の階級的地位がまちがいなく存在していることが示唆される。この序列には年齢が関与するものと思われるが、必ずしも群れのなかの最年長の犬が、最も地位の高い階級につくとは限らない」「この点をオオカミと比較すると間違った判断が生じてくる場合もある」と述べ、狼との安易な比較を戒めると同時に、そこに序列が間違いなく存在するものとして記述している。

ブラッドショーが言いたいことは何か?

ブラッドショーが言いたいことが端的に表現されているくだりがいくつかあるが、そのひとつを紹介しましょう。旧来型のドッグ・トレーナーの「しつけの10か条」を取り上げて「建設的なものはひとつもない」として退けている個所だ。(152ページから)。
まず、その10か条とは・・・。
①飼い主が食事を終わるまでは、犬にエサを与えてはいけない。
②飼い主がドアをくぐる前に、犬を家から出してはいけない。
③犬をソファーやベッドに乗せてはいけない。
④犬に階段を登らせてはいけない、または階段の上から飼い主を見下ろさせてはいけない。
⑤犬に飼い主の目を見つめさせてはいけない。
⑥犬を抱きしめたり、やさしくなでたりしてはいけない。
⑦なんらかのしつけをする以外、犬と触れ合ってはいけない。
⑧仕事や買い物から帰ってきたとき、犬に「ただいま」の挨拶をしてはいけない。
⑨朝一番に犬に「おはよう」の挨拶をしてはいけない。犬の方から飼い主に挨拶をするべき。
⑩遊び終わったとき、犬におもちゃをもたせたままにしてはいけない。犬は勝ったと思ってしまう。

この10か条を引用したのち、「10か条のうちのいくつかは科学的に検証されたが、研究によって裏付けられたものはなかった」「飼い主がこの10か条を守っていない犬は、飼い主の行動を支配していないばかりでなく、攻撃的な性格が強いわけでもなかった」と述べている。
ブラッドショーが言いたいのは、このような旧来型のドッグ・トレーナーに対する反論なのである。
そして、犬の「支配性を抑制する」との論拠に基づいた犬に対する体罰などの暴力的支配トレーニングを牽制しているのです。

犬は狼とは違います。けれども・・・

というわけで「犬は狼のような群れは作らない」そして「犬の序列は狼の序列とは違う」ということは科学的考察によって論証されています。

しかしながら「犬は狼と違って群れを形成しない」とか「犬は序列を形成しない」などということはまったく書かれておりません。
むしろ「犬は狼とは違った形で群れを形成すると共に、狼とは違うやり方で序列を形成する」ということが書かれているわけです。

いわゆる「犬は狼ではない」派の人たちの主張=「犬は群れを作らず、序列も作らない」という論理は、どこからも出てこないのでした。

むしろブラッドショーは「犬は狼のネオテニーである」と述べており、この点でも私と意見を同じくしております。

上記、「しつけの10カ条」について、もう少し解説を。

先に引用した「しつけの10か条」について、もう少し解説しておきます。というのも、こうした誤ったしつけ方を信じている方が、わりに多いからです。

①飼い主が食事を終わるまでは、犬にエサを与えてはいけない。
別のところでも述べていますが、私のクライアントの方の中にも、これを鵜呑みにしている方がいました。
その人が食事を始めると、犬も食べたそうにするのだそうです。でも「犬に先にご飯をやってはいけない」し、かと言って食べたそうにしている犬を前にすると自分が落ち着かない、結果、自分の食事をそそくさと切り上げて犬に食事を与えていたというのです。
これでは、落ち着いて食事ができません。
本末転倒というべきでしょう。
もちろん「犬が食べたそうにしていても、無視して、悠然と食べればいい」というのも正しい考え方ではあります。
でも、必ずしも犬より先に人が食べなければならないということはありません。
大事なことは、飼い主の主導権で犬に食事を与えるということです。
お散歩道10か条「7、フードは獲物だ、飼い主の」を参照してみてください。
犬には、ただで食事はもらえない、必ず飼い主の言うことをきき、許可が出てから初めて食事にありつける、ということをよく理解させましょう。

②飼い主がドアをくぐる前に、犬を家から出してはいけない。
これも考え方は同じです。飼い主が主導権を握っていれば、どちらでも構わない。その時々の状況に応じて、犬を先に行かせてもいいし、後から来させてもいいんです。ポイントは飼い主が判断し、決断して、犬を従わせることです。

③犬をソファーやベッドに乗せてはいけない。
これもよく言われます。特にベッドはダメ! という声は多い。
しかし、それでは「一緒に寝たいから犬を飼っているのだ!」という私のような(^^♪人間には我慢できない。
このようなしつけは作業犬には必要な場合もあるかもしれませんが、家庭犬には必要ありません。ただし、犬と一緒に寝ていると、犬の甘えは増大します。
犬とは一定の距離を保ちたいという人は避けましょう。
尚、作業犬といっても、日本のマタギ犬などは山に入ると飼い主と一緒に寝ていたようです。それでも甘えた犬にはならない、そういうしつけと訓練をしていたものと思われます。

ソファに関しても、乗せる・乗せないは飼い主の好みの問題でしょう。ただし、乗せる場合でも「降りろ」と言ったら犬がすぐに降りるようにしておくことは必要です。

うちにはソファーはありませんが、犬・猫立ち入り禁止の部屋はあります。その辺のコントロールも飼い主が自分の趣味や都合で決めればいいのです。

④犬に階段を登らせてはいけない、または階段の上から飼い主を見下ろさせてはいけない。
犬が「上から目線になるから」ということでしょう。確かに、犬は高いところに立つと上から目線になるというのはある程度事実です。例えば、よその犬と対峙したときに、高いところにいると強気になる場合があります。
しかし、犬との関係で社会的序列をきちんと築いていれば、時に犬が高いところから飼い主を見下ろしたところで、なんの関係もありません。

⑤犬に飼い主の目を見つめさせてはいけない。
逆です。犬は信頼した相手に対してはじっと見つめてくる場合があります。
ただ、こちらがじっと見返すとそらしたりもしますけど。

⑥犬を抱きしめたり、やさしくなでたりしてはいけない。
え~、これでは何のために犬を飼っているのか分からない。
ま、ある種の作業犬、特に護衛犬などには必要なことかもしれませんが、家庭犬において、犬をかわいがらないなんて、ナンセンスでしょう。
また、犬はおなかを上にして抱っこされるのを嫌がりますが、子犬のころから習慣づけておけば大丈夫です。これは、むしろお勧めします。

⑦なんらかのしつけをする以外、犬と触れ合ってはいけない。
これも、護衛犬の話でしょう。家庭犬とは、ちょくちょく触れ合いましょう。スキンシップは大事だし、楽しいものです。

⑧仕事や買い物から帰ってきたとき、犬に「ただいま」の挨拶をしてはいけない。
してもかまいません。ただし、飼い主の帰宅時に、犬が興奮しすぎる場合には、しばらく放っておくか「スワレ」「フセ」を命じて興奮が収まるまで待った方がいいでしょう。

⑨朝一番に犬に「おはよう」の挨拶をしてはいけない。犬の方から飼い主に挨拶をするべき。
どっちでもいいです。
飼い主に主導権があれば、関係ありません。

⑩遊び終わったとき、犬におもちゃをもたせたままにしてはいけない。犬は勝ったと思ってしまう。
社会的序列がついていれば、別に犬は「勝った」とは思わないでしょう。
ただし、犬と一緒に遊ぶおもちゃは与えっぱなしにしておくと、犬は「いつでも遊べる」と思うため、そのおもちゃに飽きてしまうことが多い。
いつも、楽しく新鮮に遊びたいと思うなら、取り上げておいた方がいいです。
ただし、一人遊び用のおもちゃを与えておくことは、何の問題もありません。

これらのしつけ方は、古い(今日では否定されている)狼の性質を、しゃくし定規に犬に当てはめたもので、そうした意味では、「犬は狼(それも誤解されたところの)ではない」と言ってかまわないでしょう。

お問い合わせ
Go to Top